今年ばかりと 思いけり
北大路京介









ひらひらと散った 夏
インディゴブルーに染まる、前に
秋へ化けた
通り雨が隠した
暗い雲に気を取られてしまった



もう二度と出会えないかもしれない、春
芽を出す時期なのに
なにかしら始まるドキドキ
もう春はこない
振り返った あの日の桜


( あの日の空は何色だったか
ふたりで見た風景は同じ色だったか
どうでもいいことだと
たぶん、
君も空も想っているだろう、)



腱鞘炎の君
僕は君のカバンを持って歩いた
よく覚えている


切り出した夏の一部が
乾燥しきった夏が
ハチミツの瓶に入っていて
電池レンジでチンした牛乳に 溶かした
白い膜が 邪魔で
スプーンですくった
よく眠れそうだ


最後の春が終わり
最後の夏も散り去り
最後の秋が色をつけ始めた
最後の冬
この瞳にうつせるだろうか


自由詩 今年ばかりと 思いけり Copyright 北大路京介 2007-09-17 15:55:22
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