私には私の
こうや

夕方5時、泣いている子供に出くわす

私は
甘い声を出してあやすほど
手馴れた大人ではない

でも私は
大音量で泣く音源を
置き去りにするほど
子供でもない

うろうろと周囲を見回したあと
気恥ずかしい思いで
額をそっと撫でてやる

湿り気と熱気を帯びた皮膚が
同じ血をもつ母性を求めている

半端な気持ちで手を伸ばした私の心根を
拒絶しているのか推し量っているのか

ただ一点だけ明瞭に
私の子供ではないということが
指先から伝わってくる

目には見えない血縁が
偽りの母性をちくちくと責める

一つの子に一つの親

子を呼ぶ母の声が聞こえ
張り詰めた息をそっと吐き出し
人知れずその場を後にした



自由詩 私には私の Copyright こうや 2007-09-15 18:03:59
notebook Home