エタノール・ラジオ・ブレイク
佐藤清児

透き通るアルコール
血脈を流れる躍動に
音にならない声は空を切る
ある日、真昼に映った少女
ラジオが空を飛んでいった

気違い染みた水族館に浮かんで消える
プランクトンやら光の粒子やら
やっとのことで理解できるのは
水母やら水泡やらが意思を持ち
血脈を流れる躍動のように
生きていたということ
理科室の水槽に流れる
少女の歌も澄んだ朝の瞳も
ある日、やがて消えていく

葉脈を削ってアルコールに浸したら
紫色に染まって
新しい世界が生まれた
消えていくものは全て
新しい世界に生まれた
真昼に映った少女
影から逸脱して
穢れた水溜りを泳ぐ
ある日
うわの空で
ラジオを蹴飛ばした
夏の日の出来事


自由詩 エタノール・ラジオ・ブレイク Copyright 佐藤清児 2007-09-15 11:28:28
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