十の取り残された意識
プル式

一。

僕はにはかない重さなど無い
そう思うから
語りつくされることも
例えば僕が空に消えても
君は行方を見失ってしまう事も無いだろう
過去にいく事も未来に行く事も
記憶に残る事も忘れられる事も
何もなくただ

消えてしまうのだろう
僕の言葉は届かない
うつろいも記憶も

ニ。

手を開いて何かを掴もうとしてみた
開く間に何かが逃げていった
多分
そういうものだろう
戯言
世界は回り続ける
笑われて落ち着く
照れ笑いでこんにちは


三。

何処までもとがっていく意識の先
いつの間にか夢の世界だった
まるで月を歩くように
幻想
赤い涙で洗われる
恋に落ちる犬
スピードという未来
ノイズと言う世界

四。

虹の中に立てる人が聞く
君は何処に行くのかね
僕は答える事が出来ない
誰かが手を叩いて僕を呼ぶ
そうして気がつくといつの間にか虹を降り
未だ橋の上に立つ過去の自分をあざ笑う
ここまで来てみて判る
過ち
そうして変わりだす記憶
そうして動き出すイメージ

五。

眠りについた枕元にある小さな窓から
哀しみを投げ入れたのは誰
光の中に見えた背中
白い中に浮かぶ緑の森と青い海
何も話すことが出来ない
全てが奪われたから
本当
そうそしていつか記憶の中で
手を振りながら消えていく背中
二度と会えないのだろう

六。

全てはあるように決まっているのだろう
いつものように仕事に向かい
いつものように同じ道を歩く
上を見上げる事も無く
50/50
同じ様に別の人生もあったのかも知れない
そう思い地下鉄のキヨスクで
趣味の悪いネクタイを買ってみた
小さな抵抗だけれど

七。

目覚めたばかりのぼんやりとした
意識
窓から外を見ると月が浮かんでいる
僕は何を思うのだろう
手のひらには何を握っているのだろうか
オセロの様に一つ真実を見つける度に
一つ嘘が見えてくる
目の前に見える月はもしかすると
月は映し出された幻影なのでは無いだろうか

八。

君は答えを知っているのなら僕に教えてはくれまいか

その意味を君に問うてもいいだろうか
僕が怖がっているのが実は時間で有るという事
世界が繋がる事が無いという事
無限とはいったい何処に向かうのか
かすかな夢が飴のかけらの様に溶けて作り出された
甘いというより酸っぱい世界はしかし
一コマの間に全てがあるのだろうか
教えてはくれまいか
答えを

九。

空に大きなオーロラが浮かび
小さな僕がそれを見上げている
月と走る
笑い浮かんでは消える
世界は少しずつ揺らぎながら
気がつかないスピードで僕を迎えに来る
そうしていつしか
うちへ帰る

うちへ帰る。



各タイトル
一 lov&hate 過去進行形の未来
ニ spiral 螺旋の情事
三 ride on the moon 明日に行きませんか?
四 another day & naight 溶け出した時間
五 raspberry belle 後悔の鐘がなる時
六 underground 悪か無い
七 chronicle 年代記
八 the answer 出口手前の落とし穴
九 turn だるまさんが転んだ
十 tedious sunday 雨降りのおつかい




自由詩 十の取り残された意識 Copyright プル式 2007-09-15 04:55:23
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