淡き明日に月が昇りて
プル式

パサリと乾いた音がした



遠くに何かが有るのだろうが
僕にはそれが何なのかは見えない
夜中の公園のような気もするし
昼間のようなな気もする
それは随分と昔に見たような
初めて見るような



パサリ



知っている顔が僕を見ている
誰だっけと思い出すけど
どうしても思い出せない
どこかで会ったのだろう
彼女だった気もするし
もしかしたら幼なじみかも知れない



パサリ



夜の電車に乗っている
顔の向こうに何かが写っているが
明かりのせいだろうか
それが何なのかは判らない
ただ少しきらきらと
無数に小さな光が飛んでいたように思う



パサリ



誰かが何かを喋っているが
声が届く気配が無い
声を知っている気もするし
もしかしたら随分と昔に見た
無声映画か何かなのかも知れない
ただ泣き出さんばかりに訴える顔が
何を伝えたいのかは判らなかった



パサリ



月夜と言うには余りに明るく
昼間と言うには余りに暗い
宇宙をすかして見たらばこう見えるだろう
そういう月空の下で誰かが本を読んでいる
それはもしかしたら
その誰かの記憶なのかも知れないし
その誰かは僕なのかも知れない




パサリ



自由詩 淡き明日に月が昇りて Copyright プル式 2007-09-15 00:41:30
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