バス
優羽

ここにはバス停以外なにもない
曲がり角からバスがきたらすぐわかる
だがそちらはみない
何もないからみなくても
バスのエンジン音は聞こえてくる

私を乗せるためだけに
バスは私の前で急停車する
早く乗れよとせかすように
エンジン音は鳴り響く

ブザーと共にバスは走り出す
どこまでいくのか知らないが
そんなことには興味がない
私はいつものバス停で降りるから

見馴れた景色が変わっていく
ここにあったたんぼは
ここにあったスーパーは
ここにあった小学校は
みんな姿を変えてしまった

私の目には昔の姿しかみえない
思い出の中で生きていたい
でも移り行く景色は
私ひとりを残して

目的地がもうすぐ見える
私はブザーを押す
鳴り響いた音は
虚しくバスの中に響き

バスの中には私ひとり
私だけのためにバスは停まる
そして私を降ろすと
またせかせかと走っていった


自由詩 バス Copyright 優羽 2007-09-14 18:50:30
notebook Home