耳の囁き
柾定位置

鏡を見ると耳がない

ああ、なんて愚かなんだろう
僕はいつの間にか落としてしまったのだ

どの路地にも落ちているたくさんの耳
あの中に僕のも落ちているんだ

耳とは喧嘩したことさえなかったのに

けれど耳は戻ってきてくれはしないんだ
いくら探したって耳は見つかりやしないんだ

お前は僕を見捨てたんだろ?
そうだよ、と間近で聞こえる

耳は一度だけ囁いて
それっきり見つからないまま


自由詩 耳の囁き Copyright 柾定位置 2007-09-14 01:37:13
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