光と言葉(わたしとけだもの)
木立 悟



壁に描かれた
巨きな逆さまの音符が
錆びた扉を指している
軋む音のなか やがてゆるりと
道しかない道が現れてくる



うすくけむる明るい夜に
けだものは光を聴いている
ひとつの星が雲を集め
道へ道へとほどいてゆく



光は
通じなさの上にやって来る
暗い場所に
少しだけ明るい暗さが降るような
見えないようで見える言葉
雲の言葉



わたしとけだものはいつしかならんだ
いつしかならんで歩いていた
たくさんのものが降っていた
たくさんのものが泣いていた
わたしも けだものも
そのなかにいた
異なる光 異なる言葉に
同じように泣いていた



何もかも届かぬやるせなさに
幾重にも降り来る空を仰ぐとき
つぎつぎと
つぎはぎに
光は手のひらを飛び越えてゆく



見果てぬ道を
見果てぬ光を駆けてゆく
わたしとけだもの
わたしとけだもの
どちらが雲より速いのか
どちらが雲より高いのか







自由詩 光と言葉(わたしとけだもの) Copyright 木立 悟 2004-05-31 14:17:17
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