両手のない男
udegeuneru

あいつらは俺に言った。

この両手が何のためについているか、知ってるか?
知らないなら教えてやろう。
目の前にいる人を、抱きしめて離さないことだ。
愛する人に、さよならするために振るものではない。
さよならのための手は、切り落とすんだ。

なにをやってるんだ、そうじゃないだろう?

この両手が何のためについているか、考えたことがあるか?
おまえだけ特別に教えてやるよ。
心して愛を、ひとつも逃さずに受けとることだ。
それをポイと捨ててしまう、軽率なものであってはいけない。
軽率な手は、切り落としてしまえ。

そう、ひといきに。


俺は両手を切り落とした。


あいつらはこう言った。
痛いのか?後悔しているのか?
でももう遅いぜ。すべては終わったんだ。

両手を失った俺の背中には、羽が生えていた。


自由詩 両手のない男 Copyright udegeuneru 2007-09-11 16:02:58
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