午後と廻転
木立 悟





火に声をかけ
火は昇る
木は かけらをわたす


蝶の影
静かに 細い
雨の陽


高い風 目を閉じ
空はこぶうた
灰の陰の青


鉛の刃が
水の紙に沈む
音の泡が 傾いで廻る


曇は見る
腕は笑む
つぎはぎの光の先


ひとつの器 色と震え
空に映り
雨を呼ぶ


動かない
火の錨 海の
灰を焼く


近づく雨に 満ちてゆく音
渇きの上に
鳴りつづく音


低い虹
忌み嫌われ
誰も居ぬ道


まだらな雨のはざま
遠く巨きな生きものの
息つぎ


さらに昇る火を照らす声
海の火 打ち寄せる
海の火


手のひらの色
舐めにくる曇
腕ひとつだけ しびれる午後













自由詩 午後と廻転 Copyright 木立 悟 2007-09-08 13:54:50
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