目覚め、あさ
山中 烏流
目を開いたあさ
最初に見たであろう夢を、
トーストに塗り付けて
ミルクコーヒーを淹れる
布団に戻ろうとする
諦めの悪い足を、そっと
叩くように撫でて
徐々に覚醒へと促して
昨日、迷い込んだ道の
隅っこに建っていた家の窓に
青い小鳥を見掛けたのを
思い出して
笑みを溢そうとする
もしあれが
青いカナリアだったら、いい
綺麗な色と声に溺れて
いっそ溺死できるのだから
トーストはまだ
水分を含んだまま、ある
海の夢を見ていたような
そんな気がしている
タイマーが鳴って
かじりついてみるも
塩からさは微塵もなくて
少し、残念に思った
ミルクコーヒーを啜る
人肌まで冷めたそれは、
緩やかに私を下って
とけようと目を瞑りながら
小さな海を
作りあげたのちに
ゆっくりと、沈んでいった
一昨日のこと
広告の裏に描いた空は
いまはもう
私の目に青を映して
ただ、浮かんでいる
あのカナリアの色だ、と
言いかけてやめた
広告の裏に見た空で
私は、
溺死などできないのだから。