ひとり まなざし
木立 悟





重なりつづける眠りの底に
かすかに生まれ
浮かぶ手のひら


目をつむり 在るのは
無いということ
分からぬくらいに 
離れていること


隠しても隠しても
はざまの色が語るのは
行方の遠さ 行方の冷たさ


どこまでも誰も居らず
雨と風の音だけが居り
近づくほどに窓は遠く
雨と風の姿は遠く


無い羽が現われ
震えのなかを舞い上がり
閉じたまぶたのまなざしを


手から手へと巡る水
粒が聴く音
音が聴く粒
不動と無言を揺らす笑み


誰も何も無い土を越え
巨きな巨きな水の仕草
洗い洗われ こぼれつづける


いつかふたたび目はひらかれて
雫を昇り 降りる光
ひとりをひとりに受ける手のひら
鳴り止まぬ器の朝を聴く
















自由詩 ひとり まなざし Copyright 木立 悟 2007-09-04 15:26:29
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