うめぼしの秘密
恋月 ぴの

良くできたうめぼしは
故郷の懐かしい味がする

すっぱさのなかから
忘れかけていたものが顔をのぞかせて
こんなんだったよね
と問いかけてくれるような

ほどよく皺くちゃで
秋アカネのような色合いを
白いご飯の上に乗せれば鮮やかに輝く

うめぼしばあさんって
もしかすると褒め言葉だったのかな
歳を重ねるごとに円熟味を増して

意固地なところあるにしても
皺くちゃの内側には
あの頃の情熱がしっかりと詰まっている

酸いも甘いも噛み分けているからねぇ
だなんて
ちゃちゃのひとつも入れようものなら
「何いってんだい!伊達に生きちゃぁいないよ」
そんな言葉がぴしっと返ってきそう

すっぱさを味わった後のうめぼしの種
食べちゃうひともいるんだよね

もしかするとこのなかにこそ本音が隠れているのかな

どこか適当なところには捨てられなくなって
庭先のひめしゃらの木のしたに
うめぼしの秘密
ごちそうさまと埋めてあげた



自由詩 うめぼしの秘密 Copyright 恋月 ぴの 2007-09-03 20:04:13
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