うめぼしの秘密
恋月 ぴの
良くできたうめぼしは
故郷の懐かしい味がする
すっぱさのなかから
忘れかけていたものが顔をのぞかせて
こんなんだったよね
と問いかけてくれるような
ほどよく皺くちゃで
秋アカネのような色合いを
白いご飯の上に乗せれば鮮やかに輝く
うめぼしばあさんって
もしかすると褒め言葉だったのかな
歳を重ねるごとに円熟味を増して
意固地なところあるにしても
皺くちゃの内側には
あの頃の情熱がしっかりと詰まっている
酸いも甘いも噛み分けているからねぇ
だなんて
ちゃちゃのひとつも入れようものなら
「何いってんだい!伊達に生きちゃぁいないよ」
そんな言葉がぴしっと返ってきそう
すっぱさを味わった後のうめぼしの種
食べちゃうひともいるんだよね
もしかするとこのなかにこそ本音が隠れているのかな
どこか適当なところには捨てられなくなって
庭先のひめしゃらの木のしたに
うめぼしの秘密
ごちそうさまと埋めてあげた