なかがわひろか

女と旅に出た
列車に乗って
読み方の分からない駅で降りた

駅員のいる改札を
通り抜けるときに
よい旅をと
駅員に声をかけられた

ありがとうと言い返したが
もう駅員は次の人の切符を切っていて
僕たちにはとても入り込めないような
日常を繰り返していた

女は喉が渇いたと言った
僕は飲み物を自動販売機で買った
女はおいしそうに飲み干したが
本当は別の飲み物の方がよかった様でもあった

旅館に着いた
仲居に挨拶をして
部屋に案内された

見晴らしのいい部屋だった
僕たちは早速温泉に入って
浴衣に着替えて
おいしいご飯を食べた

眠る前に女は僕の体を触り始め
僕たちは性行為をして
しばらく話をしてから
眠った

次の朝起きて
この街の名前はどう読むのかと女将に聞いた
女将は怪訝な顔をして
こちらへどうぞと僕たちを違う部屋へ案内した

そこにはこの街の住民であろう人たちが
たくさんいた
昨日駅でよい旅をと言った駅員もいた
一番偉そうな人が
女を指さして
死刑だと言った

周りにいた人たちも
やんややんやと騒ぎ立てた

僕はできる限りの大きな声で
街の名前を読めなかったのは僕ですと言った
街の名前なんか関係ない
どこからかそう言われて
僕たちはされるがままとなった

僕は女を助けようとした
だけど屈強な男たちに虐げられて
僕には何もできることはなかった

それでもあまりに僕が暴れるので
街の人たちは
何人かの女を連れてきた

女たちは
とても美しく
魅力的だった

女たちは僕にいろいろと奉仕をした
それはとても気持ちがいいものだったし
僕は何度も昇天した

そのうち死刑になる僕の女のことは
どうでもよくなってきた

女は何度も僕に助けを求めたけれど
僕は女たちの奉仕に目を閉じて
もう何も聞こえないふりをした

そのうちに女は死刑になった
爪をはがされ
髪の毛を全部引っこ抜かれ
最後は首を絞められて
無惨に殺された

僕が愛した女は
もうその原型を留めず
ただ醜い肉のかたまりとなった

僕はそんな女の姿を
ふくよかな女たちの太ももに
頭をもたげて見ていた

女の太ももは
とても気持ちがいい

(「旅」)


自由詩Copyright なかがわひろか 2007-09-03 00:27:56
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