ぼくは君のケーキになれなかった
新守山ダダマ

ぼくは小学校一年生の時、自分の誕生日に友人4人を呼んで誕生会を開いた。
普通の家庭ならこういう場合、母親がケーキを用意してくれるものだが、ぼくの家庭は両親共働きで昼間は母も家にいなかったので、ケーキはなかった。
すると友人の一人・T君が、「ケーキがないんなら、ぼく帰る!」と怒り、本当に帰ってしまった。
ぼくたちは慌てて引き留めたが、T君の意志は強かった。その日はちょうど雨が降っていて、ぼくはびしょ濡れになりながら必死でT君を追ったが、だめだった。ぼくも他の3人も嫌な気分になったので誕生会を中止し、ぼくたちは解散した。
それから数日後の日曜日、母親がケーキを買って来て改めて誕生会を開いた。T君も呼んだがT君は来なかった。T君はもうぼくの友達じゃなかった。そして二年生になると、T君は転校していなくなっていた。


散文(批評随筆小説等) ぼくは君のケーキになれなかった Copyright 新守山ダダマ 2007-09-02 14:11:06
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