『化石の街』
東雲 李葉

眠らない街に迷い込んだ。
極彩色の光が淀んだ空気に鈍く映る。
目を覚まさない空を見上げた。
止まったような時間の中に濁りきった月が浮かぶ。

人を貶めて誰かの影に怯え廃れた約束に縋りつく。
忘れ去った昨日を足りない指で数えたって元には戻らない。
帰る所なんて無い。何処へ行くかも分からない。
眠らない街は眩しいけれど明るくはなくて。
目の覚めぬ空は僕のことなど何一つ知らないまま。

彼方の未来を見越そうと超高層の鉄塔の上。
朝さえ来ないこの街が世界のすべてだと知った。
今日が何時だか分からない。昨日は何時までだろう。
眠らない街では錆びた骸達が闊歩して、
造られた光源が雲の肌から僕らを見下ろしている。

ずっとこうやって時間は流れていって、
いつか瓦礫も骨も土へと還るのだろう。
だとしたら僕らの生きてる意味は何?
夜明けを知らない子供達は如何して明日へ歩き出すの?

月は崩れ去り僕は欠けらを握り締めた。
裏切られた夢は屍の心臓に突き立てられた。
夜の果てに見た暁が炎える景色を描いて、
幼い子供らは覚めない空の下で眠るだろう。

眠らない街は化石となって横たわり、
光の差す日を夢見て静かに小さな呼吸を止めた。


自由詩 『化石の街』 Copyright 東雲 李葉 2007-09-01 09:12:50
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