幕の向こう 
服部 剛

明るく前を向いて 
「365歩のマーチ」を皆と歌い 
両手を振って明日へと歩む 
「あるべき姿のわたし」 
の下を 
「ふぬけたわたし」の亡骸が 
独りうつむいたまま 
低空飛行している 

( 偽りでもなく 
( 亡骸でもない 
( ほんとうのわたしは 
( 一体どこに 

少し気をゆるすと 
心の隙間から 
吹き昇る灰煙 

見上げた空に 
低く垂れ込める曇り空の 
重圧を背に歩いている 

( 道の向こうから 
( 鼻唄歌う若い母に押され  
( ベビーカーから顔を出す幼児 
( 豆の手でふちに掴まり 
( 目に映る世界に 
( 瞳を見開いて  
( 傍らを通りすぎる 

わたしはただ 
目の前をモノクロームに覆う 
見えない幕を 
この両手で 
引き破りたい 





自由詩 幕の向こう  Copyright 服部 剛 2007-08-31 20:02:07
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