夜めぐる夜
木立 悟




灰の混じる手で
顔を洗う
灰は髪になる
灰は語る


火が残り
背を照らし
髪の影を燃し
ひとりを浮かべる


月を連れ 別れる
赤い光が 鉄路を去る
隣を歩む声が笑む
どうか応えすぎませんよう


片目をつむり 角を曲がり
闇に踏み入り 両目をつむり
緑の火を見て
走りつづける


うすくひらいたからだの影に
鉄の影がいくつも重なり
骨のように動かない
矢のように動かない


風が何も揺らさずに揺れ
ひとつの屋根を指している
空も 海も
互いを指して揺れている


水面を埋めた黒いひまわり
光に照らされ 振り返り
一斉に流れ星をあおぎ見る
じっと行方を見つめつづける


灰に残る熱
指に残る灰
指は描く
夜を描く













自由詩 夜めぐる夜 Copyright 木立 悟 2007-08-30 15:14:19
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