呼ばれている
千波 一也
器の
壊し方を知っている
けれどもわたしは
外側にいない
器の
壊れ方をおぼえている
けれどもあなたは
内側にいない
朝と呼ばれるものや
愛と呼ばれるもの
わたしがそれを責めるとき
あなたは上手に
忘れてほしい
その代わり
終える花だとか
果てる星だとか
あなたの傾きに見合うような
耳の飾りにわたしはなろう
雲は
その名のための雲ではなく
清流は
その名のための流れではない
拒まれる祈りの
生命に触れ
響きは
いつでも澄んでゆく
ひとつを決めない
痛みのなかを
ただひとり
澄んで、
ゆく
飽きもせずに
無色のわたしと
不可能なわたし
時々あなたは
答の途中できれいに消えて
だから、
ほら、
いとしさが呼ぶ
どこまでも
呼ぶ
幾らでも間違えられる
器のように