一枚の絵
たもつ


年老いた画家は絵の中の少女に羽を描いた
羽を得た少女は絵の中の空を楽しそうに飛び回った

画家は少女にもっと立派な羽をつけたくて描き直そうとしたが
羽をとられてしまった少女はうつむいているばかり

そしていつしか画家は
羽を描く方法を忘れてしまった


でも、本当は
最初から少女も画家も存在なんかしていなくて
生乾きの筆が一本ころがっている

そんな絵が1枚だけ飾られた美術館を
私はいつも持ち歩いている






自由詩 一枚の絵 Copyright たもつ 2003-08-26 19:29:48
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