くうふうりん
たりぽん(大理 奔)

   積乱雲を夕刻に照らし
   今日の終わりの貌
   南南東に流れてゆく
   身代わりの月は
   時々かすみ
   雲よりも遠くで
   私を笑っている

またたく稲妻が呼ぶ
雲の上を白く光らせ

   もうここでいいと
   足を止め
   雲の向こうを見透かそうと
   曇った月に目をこらせば

氷を噛む音で
夏の終わりの
蝉を踏む

   厚い雲が
   夜を覆い尽くすと
   つぶてのように驟雨しゅうう

空を見失った私と
散った夏のなごりを
たたきつぶすように


   割れた風鈴
   幽かなかすかな鳴き声だけを
   忘れながら
    

見上げるまぶたの月と
踏みつけた蝉の亡骸を
濡れながらつなぎ
立ち尽くす

   それが私






   



自由詩 くうふうりん Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-08-22 23:12:27
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