失魂
秋也

有史以来
人が
夕焼けに勝った瞬間はあるのだろうか
魂が離れ
棺の中で
物体が
停止する時
そこに
無い
モノへ
向けて
投げられる
すさまじい
悲しみ
注目
勝るといえば
その時ぐらいか
それでは
もう大気に溶けてしまっている
半分以上
夕焼けと同化している
勝ちたいんだ
体と心が一致している時に
どんな美しい夕日よりも
どんな激しい赤雲よりも
どんな哀しい朱にも
勝ちたい
血と肉
脳を持って
勝ちたい
だってそうだろう
その時
人は
始めて大きな何かを超えるんだから
もう棺が花で埋まる
咽るように香る
赤バラ
咽び泣き
棺が閉まる
人の永い夜が始まる
闇がかった
夕焼けの終わりが
遊び足りないと
ひたすらに寂しくほほ笑みかける
だから
棺の中で笑った
まだ
彼と
私は
同等
何も持っていないから
せめて
夕焼けぐらいは
打ち負かしたいんだ
血に朱が不足している
流さなきゃ
濃さだ
まだまだ
失うには
早すぎる
夕焼けを抱きたい
抱いてから
魂を
わからない
どこかに
飛ばす


自由詩 失魂 Copyright 秋也 2007-08-19 22:31:51
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