風の名前
明楽

幼い頃、年明けには凧上げ。
冷たい北風の中、
小さな手で一生懸命糸にしがみついていた。
その手からざぁっと凧を連れ去ったあの風は、
友達がほしかったのでしょうか。

桜咲く春の日。
鬼ごっこをして遊ぶ私たちの間を、
桜の花弁を引きつれ走り去ったあの風は、
今どこを駆けているのでしょうか。

空高くそびえ立つビルの間。
その中を
きりきり渇いた悲鳴を上げながら吹く風は、
ここから逃れたいと訴えているのでしょうか。

衣替えの秋の午後。
学校帰りに
自転車の上ですれ違った金木犀の風は、
遠く離れたここでも出会う事が出来ました。





1997



自由詩 風の名前 Copyright 明楽 2007-08-17 20:41:07
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