生き甲斐
あおば



日照り続きの夏に
育つのですと稲穂
刈り取られたあとは
脱穀されて籾摺りされて
精米されて
美味しいお米に生まれ変わり
スーパーの
コンビニの
商品棚に並べられ
熱湯で茹でられて
蒸されて
美味しい御飯になるのを
待っているように
運命にぶち殺されるのを知って
殺される前に死にたいと願って
自殺行為を考えて
集団自殺に参加して
真っ先に
殺されそうになって気がついた
なんのために死ぬのかと
殺されるために死ぬのか
食べられるために死ぬのか
誰かのためになるのかと
自殺しないでも良かったのではないかと
まだ
自殺しないで良かったと思ったのは束の間のことで
真人間になって
のんびりと生き続けていたら
生真面目な生き甲斐が亡くなったので
不真面目になり遊びに飽きて
こんどは人殺しをしたくなったので
テロを唆したり戦争をしかけたりは無理なので
町内の範囲内で
裏切りの噂の種を見つけては
プランターで大きく育て
種を増やしてばらまいて
諍いが増えるのを眺めては
年齢の割には
楽しく
元気良く
過ごしています




070815


自由詩 生き甲斐 Copyright あおば 2007-08-15 20:51:56
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