天球へ
こしごえ

真夏に日車は、咲いている


雷鳴の空を裂く。
轟音で目を覚ます
一輪車に稲光りが青白く反射する
一瞬で葉陰の殻は黒焦げになり
焼けた臭いに鼻をひる
傘の骨はしろがね色で
死灰しかいの暗さを支えているのだ
その時から、

黙秘している夜行列車の無告が
息継ぎをする無人駅には
生まれたばかりの切符を切る音

精神統一をしているサーカスが
空中ブランコで交わるが
質量不足で滲んでしまい感無量

あってはならない
大空が焼けおちるなんてことは
道化師の手には造花が一輪
浮上へ沈下しながら溺れているし
車掌のポケットには錆びた笛
発車時刻は静止している風鈴だから
ゆく夏のいかずちに砕け散る
亡霊の影が
ひるがえり覚醒した
星星の光
まなこから星が流れておちてしまうの。


雷鳴が静まるころ
絶えまない葬列に
未だ不足はありますか
さいはての大輪を手折るのかしら
空蝉が鳴くのです

墓守は、いまもしづかに微笑んでいる







※日車(ひぐるま)→ヒマワリの別称。





自由詩 天球へ Copyright こしごえ 2007-08-15 07:14:38
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