甘いパン
なを

かわいた草むらをかきわけて歩きながら、
甘いパンをわけあって食べる。
ふくらんだあなたの頬をながめていると
わたしたち死ななくてもいいのかもしれない、
だれかから許してもらったみたいな気ぶんになる。

草むらがとぎれて砂におおわれた道へ出る。

ゆびのやわらかいところでもっとやわらかいところを撫でる。
パンくずをはらいのける。無心に。
あさはかなわたしたちのお祈りはパンくずのようで
歩くうしろに鳩が群れる。

ふりかえりふりかえり、あなたは笑う。
無心に。
わたしたちもしかして死ななくてもいいのかもしれない。
あなたと甘いパンをわけあって食べる。
パンくずをはらいのける。

これがお祈り。


自由詩 甘いパン Copyright なを 2003-05-08 19:25:01
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