即興詩会:第4回(夏の陣編)
ワタナベ

ワタナベ [17:31:31]
「ミネラルウォーター」 10分で はじめー
参加者 いままでで6〜7人いらっしゃるので それぞれを名前順にスレッドにならべて 獲得ポイントを表示します 独り言
最終的に 夏の終わりころに獲得ポイント合計やら ひとつ目を引く作品の各賞を決定します。

○月見里司
「ミネラルウォーター」

 冷蔵庫一杯に、ぎっちぎちぎにミネラルウォーターを詰めているやつがいた。俺のことだ。最初にそれをしていたのは二人目の彼女で、冷蔵庫の扉を開けてしまい絶句する俺に向かって(冷蔵庫の照明が、たくさんのペットボトルで乱反射している!)、飲むかとただ訊いた。そんなに詰めたら冷えないだろうというくらい一杯にミネラルウォーターは詰まっていて、何かの(もしかすると、たぶん寒気のするような)理由があると思って絶句していた俺は驚いた。飲むのか。なんのメタファーでもなかった。ミネラルウォーターはやはりミネラルウォーターに過ぎず、それは飲料水として日々普通に、ごく普通に飲まれ、減った分は補充されていた。それだけだった。だから俺は冷蔵庫一杯にミネラルウォーターを入れている。普通に飲むために。来客はたまにしかないが、皆無と言うわけでもなく、冷蔵庫を覗き込んで絶句するやつも勿論いる。俺はそいつらに向かって、飲むかとただ訊くだけだ。

○櫛田鶇吾
「ミネラルウォーター」

ラスカトロフの白いカラスが飛んでいる
硬質なレプリカに似た5本の松は
3度目の奇跡を顧みない

乱反射する簾の奥の銀貨
パッケージは竹光だと云う

嗚呼、我々の枯渇を慰めるものは
鬼神の涙よりも静謐な、青
 
ワタナベ [17:41:18]
うお これは力作ぞろいやなぁ 終了〜

灰人/カイト [17:42:20]
ねむい
ワタナベ [17:42:32]
ちょっとこれは俺一人では 寸評きついw みんな寸評してみて
おー かいちゃん!! やろう!!
かいちゃん 寸評から参加してw

☆灰人/カイト
さとちん いいなー 自然の持つ言いようのない圧倒感を感じる。
トーゴくん きれいだが、きれいすぎるな。ミネラルウォーターらしさが希薄かも
さとちんに一票

☆櫛田鶇吾
月里さんは、とにかく頭の中を文字通りにミネラルウォーターで一杯にしてみたって感じ。愚直とも言えるけどそれでこれだけ発展出来るのは充分評価に値するかな。

☆ワタナベ
んー 難しいなぁ、詩情という点では櫛田さんの方が
詩情を前面に押し出した感があって好感がもてる。
月見さんのは「なんのメタファでもない」とあるように
本当になんのメタファでもない。でもそれが故に
匂いたってくるものがある。
これは好みの問題だろうとおもうけれども、月見さんは
良くも悪くも即興として、自分の持つ詩情を自分なりに
肉感的に表現した感じ。櫛田さんのは、さらにそこから
ちょっぴりだけ一歩進んでる感があった。

☆月見里司
ラスカトロフというのがなんなのか、わからないけど、わからないので、銘柄ということにして読み進めます。白いカラス、五本の松とかはボトルのラベルに描かれてそうな感じで、簾、竹光、鬼神というと和風なタームなので、一気に無国籍感が増します。最終連での「嗚呼、」が息をつく感覚で素敵でした。(ぷはー!)的な。

ワタナベ [17:52:01]
今回は 総合的に月見さんに 軍配を

月見里司 [17:54:28]
「煙草を吸わない」 十分間でどうぞ。

○灰人/カイト
「煙草を吸わない」
白い靄を掻き分けると 冷たかったので 煙ではなかった
すうと息が吐かれ しずかな顔が浮かんだ
ゆっくりとまぶたを開くと 長い睫毛がしとやかに咲いた
くろいまるい
まるいくろい に
吸い込まれたまま私は
神々に似た誰かに手をとられて
たゆたうのであった

○ワタナベ
「煙草を吸わない」
いっぱいになった灰皿の中で蠢く
タァルを暗がりが覆い
煙がさらに喉を通過するたび
上下する胸の
奥にともるジッポの火種

(シャキリ、シャキリとまたたきながら

タァルは肺胞の隅々まで
影のように染み
また煙は部屋のくらがりのように
そっとぼくの背中をなでる

新たに煙草に火を灯す

(シャキリ、シャキリとまたたきながら

ぼくが背中におおいかぶさるくらがりを
厭うならば煙草を吸わない
煙草を吸わないぼくの肺胞は
健やかに酸素を取り込み
タァルを駆逐していくだろう
ゆっくりと時間をかけて

そのようにしてぼくの胸は上下し
そしてそのようにして
ぼくは生きている

○櫛田鶇吾
「煙草を吸わない」

快晴の肺胞に
小鳥たちが巣くい
肝臓の山の麓で地震が起きても
甲状腺の谷でまあるい熊が踊らずに済む

バナナボートはかなりのスピードにも耐えられるらしい
実際あきこはそれですごいGを感じたと言った
智哉はパイロットになりたいんだって
パイロットねぇ・・・。

深海のらくだが、千年橋を叩いて渡らないように
ぼくは煙草を吸わない
 
☆ワタナベ
かいちゃんのは 少し漠然としすぎているかなぁ

櫛田さんのは、飛び立つ準備運動の時点で、いろんな
準備運動をしてて面白いんだけど、飛び立てていない
感触。

☆櫛田鶇吾
カイトさんのは隙がないね。すごく丁寧。

☆灰人/カイト
なべっち 凡庸(>_<、)
トーゴくん こういうふうに拡散していっちゃうのは嫌いじゃないよ

☆櫛田鶇吾
確かに、特に着地がちょっとつまらないかも。あと「シャキリ」とかもデメリットの方がこの場合多い。ナベさんのやつ。
カイトさんのは、「しずかな顔が浮かんだ」のところ、
まるまる削ってもいいかも、なんか展開がより安直になってしまうような。
「神々に似た」もそのせいであんまり活きずに陳腐になってしまうし。

☆月見里司
灰人さん
ねむり姫を起こして一目惚れ、という読み方は身も蓋もなさすぎでしょうか。くろいまるい/まるいくろい が素敵ですが、全体の雰囲気とは少し乖離していますね。前半と後半の改行形式がバラバラなのも惜しいところです。私は後半のほうを推します。

ワタナベさん
どことなく戦後の、というか少し前の文調です。雰囲気は良いのですが、雰囲気だけなら後半二連だけでも充分に感じますし、もっと書き込んでゆくなら (シャキリ、シャキリとまたたきながら を単に調子を整えるための小節線ではなく、もっと刺さるような使い方をして欲しかったです。

櫛田さん
最初テーマの縁語で書き出しているのに、途中から煙草そのものが極めてどうでも良くなっている気がします。期せずして禁煙のプロセスに似ているかも。それがふわりと広がっていくのを最終行でブツリとやってしまうのは、時間切れゆえかもしれませんが好きです。

月見里司 [18:16:02]
この寸評と皆さんの評を総合して、櫛田さんに票を。

櫛田鶇吾 [18:18:52]
いきます。「絵描きたちの沈鬱」コレいってみよう。なるべくお題に引きずられない面白い展開を希望。

○灰人/カイト
「絵描きたちの沈鬱」

カミソリがカツンと落ちた
泣いている

(もうどうしようもないのです・・・

(見て下さい。私の胸の皮膚を採取したのです。
(でももう干乾びてすこしも広がりません。
(こんなものっ

ぺしっ

(見て下さいあの窓の外を
(あれも私が描いたのです
(なんてざまでしょう

押し殺した泣き声

(ええ、ええ、これも
(沼です底なしの。ええ
(もうできあがります

(さあ、もういいでしょう?




ドボン

○月見里司
「絵描きたちの沈鬱」

ドアの向こうに僕は
絵の具セットを持って
ぽつんと立っていた

図工室でイッシンフランに
絵を描くみんなには
顔がなくて
どれも同じ落書きで
時計の目が
こっちを見てる

夕焼けがすごい教室にもどって
顔じゃなくて
時計にでっかい
目玉を
描くことにした

○ワタナベ
「絵描きたちの沈鬱」

エドガー・アラン・ポーから
江戸川乱歩が生まれたように

絵描きたちの沈鬱から
イメージの欠乏が生まれ
それが駄作と名づけられて
歴史の流れに飲み込まれてゆく

わたしは船にのっている
歴史的現在という名の
そこから流れにむかって
ワインをそそぐ
そそがれた赤い筋は
ふっと拡散し
(もはや群青の海がひろがるばかり
船底をたたく波がよせ
もはや色の見えなくなったわたしのワインを
遠くかなたへと連れ去ってゆく

南十字星があがろうとしている
絵描きたちは
流れの中に沈鬱している。

☆灰人/カイト
さとちんのは ひとつのイメージにとらわれすぎている気がする
なべっちのは 「絵描きたちの沈鬱」が「歴史の霞」に入れ替わってる

☆ワタナベ
かなり苦戦の跡が見られる気がするw
その中でもかいちゃんが一歩リードな感じかなぁ

☆月見里司
灰人さんのは、絵描きという名前ですがこれは神様に見えます。世界の終わりでしょうか。
凄いのにドボンだけが惜しいです。ここまで壊さなくてもいいのに、と。
ワタナベさんのは、二連目の「イメージの欠乏」を江戸川乱歩張りの駄洒落に仕立てて欲しいと思いました。
そこが決まったら最高でしたね。

☆櫛田鶇吾
カイトさんのは、ストーリー性と口語体が上手い具合に組み合わさってるけどいかんせん内容がなさすぎる。それと本当は「ドボン」のところでもうひと工夫したかったんだろうなーと思った。

月里さんのはありきたりながら日常の呼吸がちゃんとあって、ことに終連での未然形な期待感は素敵。出だしのあたりの要素をもうちょいカクテルすれば化ける可能性がある感じかな。

ワタナベさんのは土台がしっかりしていてつい読み込んでしまう。展開もなかなかきれいだね。

櫛田鶇吾 [18:37:55]
3回戦と言ったけど、票を入れるならワタナベさんかな。
ワタナベ [18:38:14]
おーーーーっしゃ!! この一票はうれしい 純粋にw
この面子で勝ち抜けたことがうれしいなw
あざっす では編集して さらに厳しい読者の目にさらしてくるよw

”夏の陣、第5回戦はこのようにして行われました、興味のある方
少しでもおもしろそうだなと思われた方はどんどんご参加ください。
俺そっちのけでやってもらってももちろんかまいませんw
ルール等はスレッドをご参考に、後でログだけ送ってもらえれば
こちらで編集いたします”






散文(批評随筆小説等) 即興詩会:第4回(夏の陣編) Copyright ワタナベ 2007-08-12 19:11:08
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