渇望
ゆるこ

たまらなく生きたくなった日
 
空は青々として
重い曇が素敵な程輝いていて
泣くことしか出来なかった心が
最後の雫を溢した
 
空気はみずみずしく
仄かに甘い香りを漂わせて
いつかの縁日を思い出した
繋がりを拒んでいた心が
ぶるり ぞくり と震えた
 
この指先はなんのためにあるのかと
突然の思考の降臨に
私は愛、と
いっちょまえに答えられなかった
 
この指先は未来を紡ぐためにあるのだ
 
 
掌を空にかざす
世界をすり抜けたこの手は
きっと笑っているはず
 
綺麗な色をした蝶が
枯れ葉のように世界に落ちた
 
私は微笑みながら
この指先で蝶の羽を
優しく
優しく
 
千切った


自由詩 渇望 Copyright ゆるこ 2007-08-09 16:38:10
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