戦争と革命
円谷一

月の様子がおかしかった
意識の破片を暗唱していたのでしばらく気が付かなかったのだが
外に出ると火薬の匂いがした 子供達が国境付近で銃の撃ち合いをしているのだ
体が焼けるような匂いだ 月が森永のムーンライトのクッキーのように見えた
今は真冬 堤防まで駆け出し 川で屯する12、3才の子供に声を掛けた


極寒の中で爆弾の爆風で火照った体を冷やしている さっきまで戦争ごっこをしていたらしいのだが この子らは貧困の為に兵隊になれなかった子供達で これから隣国に乗り込んでお国と唯一教の神様の為にこの身を捧げるというのだ 慌てて彼らを静止させた そんなことをしては駄目だ 家に母さんがいるだろう 早く帰って安心させるんだ すると敵軍が戦車で家を踏み潰していったのだと言った 銃も弾も火薬も自分の命と家族を守る為に基地の弾薬庫から盗んできたのだ と 少年達は言うことを聞かず半ば馬鹿にしたような口調でじゃあね と別れを告げた 市街地の夜空が真っ赤に染まり微かな爆発音が聞こえた どうやら敵国から攻めてきたものらしい


川を渡って堤防を上ると 市街地の建物が炎上し 爆発して倒壊したり 煙が上がって充満していた 下りて突っ走っていくと誰かが基地の弾薬庫に手榴弾を投げ込んで大爆発した 屋根が上空に吹き上がっていくのが見えた こちら側の国のテロだ テロリスト達は戦車やヘリや武器などを奪い取り 基地を基地にして 市街地を占領した


噴水の止まった広場ではさっき見かけた子供達よりも幾分小さい子供達が 木の棒を持って振り回してチャンバラごっこをしている その子供達を必死に安全な地下へ連れて行くお母さん達 爆音と共に爆風が吹き荒れ妻子達は煉瓦の道に吹き飛ばされる 血を流し意識が朦朧としながらも封鎖された地下へと降りて2度と帰ってこないのである 地下では無差別虐殺が行われトルソーだけで性交する敵国の兵士達が蛆虫のように群がっている


革命と戦争が同時に行われている どっちの味方というだけで参加できるのだ 国王や首相には雲の下の争いのように見えるので どちらもこれといって声明を発していない 互いは嫌ってはいないが別段親しくはない 革命にも戦争にも興味が無いので 止めろとももっと激しくやれとも言わない ただテレビの前に出る時だけはまともな言葉を並べ続けるのだ もし身に危険がさらされたら 自分だけ地下の核シェルターに逃げるのだろう


国境近くまで行くと 金属の下に落ちた雨のような銃声音が鳴り響き 激しい攻防戦が繰り広げられていた 素早く体を屈まないと撃ち抜かれてしまう 草むらの中を抱腹前進で突き進んでいくと果ての見えない鉄柵が広がっていて それは所々折れたり曲がってたりしていて さらにバリケードを作って青年や少年達がこちら側の国の兵士と戦っている そしてそれらを取り囲んで敵国の兵士や青少年達が戦車から大砲を飛ばす 門と鉄柵とバリケードが木っ端みじんに吹き飛び キュラキュラメシメシと戦車が国へ入ってくる そこでもう一発砲弾を飛ばして人々を皆殺した 先頭に続いて入ってくる戦車 ヘリ 国王の宮殿の前に着くと革命軍もやって来て共に敬礼した そして国王失格の国王を暗殺する為に戦闘機で一瞬にして宮殿を破壊した 後は地下シェルターを探すだけとなった


自由詩 戦争と革命 Copyright 円谷一 2007-08-09 03:48:10
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