煙突
haniwa



きみは煙突の上に立っている
煙突の上に立っている
夜景をマジックでひきつぶしたような
煙突の上に立っている
燃える夜空の裂け目のような
煙突はそびえ立つ

きみは煙突のへりに立ち
はるかな闇を見下ろしながら
どちらに落ちるか選んでいる
穴の中の暗闇か
穴の外の暗闇か


青空の中に次から次へと雲を吐き出していたのはもう過去のこと
溶けた石と男達の汗が光り続けた昼食のチャイムはもう鳴らない


きみの瞳は
つねに真下に向けられる
きみの足は
いまにも踏み外せる
きみの掌は
酸化して空を切る
きみの喉に
叫ぶべき言葉はない
きみの心には
誰もいない


僕は煙突の下に立っている
煙突の下に立っている
夜空の星をかきけすような
煙突の下に立っている
きみが選んだときのために
白い花をそこに植える
きみの場所から見えるくらいの
白い花をここに植える


自由詩 煙突 Copyright haniwa 2007-08-07 03:58:29
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