降り来る言葉 XXXII
木立 悟



火と花と手
小さな胸
火は花は手


風と声が水になり
窓の外を流れている
音の影は 鳥に分かれる


古い息が聞こえくる
指に触れて 景は走る
何かから逃れようと振り向く


緑の格子と
冷たい音がもたらす明かりと
文字だと思われることのない文字たちと


火も心も 同じかたち
互いを焼いて やまぬかたち
どうしてもひとつに なれぬかたち


羽は水になりたがり
震えは水を吸いたがり
細い鉛は 細い鉛に消えてゆく


火に触れたくて泣きつづける子を
闇はどうしてなぐさめればいい
近寄ることさえできぬ輪の淵


管を通る低い光が
なろうともせず唱になり
滴のなかの業の火を聴く














自由詩 降り来る言葉 XXXII Copyright 木立 悟 2007-08-06 22:11:34
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