ポケットに速度
AB(なかほど)

  

晴れない空がある
晴れた空もある
ゆれた気持ちがある
手垢のついたおもちゃがある

微分したキャンディーは溶けて
積分した気持ちは夕焼けに

父がいた
母がいた
笑っている
僕がいた


   吉じいは
   ズボンの右のふくらんだポケットから
   アメリカ色のミルクキャンディーをくれた
   夕べ
   いつまでもアメリカ色のキャンディー
   だとばかり思っていた左のポケットから
   バイオレットが出てきたよ
   そのまま 
   左のポケットに押し込む
   と 
   そこから夕焼けが


さらさらとゆっくりと
溶けてゆくものが僕で

微分した虹がかかって
積分した夏が駆け抜けてゆく

またひとりの友が溶けてなくなった夜
僕の全ても溶けてしまいそうで
こころの手で強く握ろうとした




fromAB


自由詩 ポケットに速度 Copyright AB(なかほど) 2007-08-06 08:47:43
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