夜虫
黒子 恭

生きてゆくしかないので
この街で生きてゆくしかないので。
 
中の中に詰まらないものばかり、必死に詰め込もうとして足掻いた。先日死のうと努めてみたが死ねず、
明日晴れるかな、と鳴いていやる夜虫は、都会に踏み潰されそうです。
 
母さん、僕はやればできる子でした。
ですがごめんなさい。
今はもう日々の暖かき、忘れてしまつた。
 
電線の隙間から見える月はやけにぼんやりとして、ほらまた、心を少しつんざいてゆく。
 
悲しかった事は涙が伝えてくれました。
なら、それ以外では何を伝えればよいのだろう。
 
まだ夜に染まつている都会の内側で
夜虫が今日も踏み潰されそうです。
 
 
 


自由詩 夜虫 Copyright 黒子 恭 2007-08-06 03:09:51
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