宇宙デート
円谷一

宇宙の入口
人々が宇宙船に乗ってICで長蛇の列をつくって順番待ちしている
宇宙でもNASAはお金を取るようになったのだ
このような宇宙への入口は大気圏近くにあって 世界中にある
君は地球から少し離れた星に住んでいる ネットで知り合ったのだ
まだまだ人間の科学の進歩は遅いが 月を中心として宇宙文明が栄えている
地球では昔から相変わらず戦争が続いているが他の星では戦争が起きていない
一歩地球を飛び出すと宇宙に取り残されたような気分になり連帯感が生まれるらしいのだ


まだ一度も宇宙に行ってみたことが無い 人工の酸素を吸って生きている人間 差別とは言わないけど一種の物珍しさみたいなものを胸に抱いた 初めて君が地球ではない星に住んでいると言った時だ


その後も順調に仲が深まってきて 君は休暇中に地球に来て会いたいと言ってきた 君がどんな女の子か想像しながらワクワクしていた 15歳の時だ
でも地球に来る為には昔で言う日本から海外へ行く値段ぐらいしていた High Schoolに通っている子供にしては莫大な金額だ しかもネットで知り合った何処の馬の骨か分からない人間の元へ会いに行くという馬鹿げた話を両親が許すわけがない しかし君は僕を心から信頼し 勉学と両立してアルバイトをし 目標金額を貯めた


東京国際宇宙ステーションのロビーで日曜日の朝待っていると地球とは全くファッションの異なった ある意味進んでいる洋服に身を包んだ君が手を振ってやって来た 目印のポニーテールをしていた 握手をして互いの顔を見て笑った 君は美しかった 物珍しさなど一欠片もなく 地球人 いや 日本人と言っても何の変哲もなかった 3日かけて地球にやって来たのよ? と挨拶の前に言った
東京を案内していると 君は私の住んでいる星とほとんど違いは無いわねと言った 君が言うには(といっても君の住む星をネットで調べて分かっているのだが) 地球と同じようように緑に溢れていて 天体望遠鏡で見ると緑色に澄んでいて 海は一度も見たことが無いらしいから海に連れて行ってよ と言った


浮遊列車に揺られて数時間 日本で有名な江ノ島という所に連れてきた 海水浴場は今がピークで大勢の人々で賑わっていた 君は伊勢丹で水着を買ってきてあって 初めて入る海に興奮していた 海水のかけ合いをやったり 海の家ですいかを初めて食べさせたり 砂浜で体を焼いたりした 住んでいる星では紫外線を浴びることはないらしい 紫外線大丈夫なの? と聞くと サプリを飲んでいるから大丈夫よ と笑った 本当に太陽って海に沈むように見えるのね と君は夕日が海に浸かっていくのを見て言った 帰り道くたくたに疲れて2人で座席を占領して眠っていた 宇宙ステーションでお別れをする時に 今度は君が私の星に遊びに来てよね! と言ってくれた にっこり笑って そうだね! と言って別れた 君の乗ったシャトルが煙を上げて宇宙に吸い込まれるのを見送った


自由詩 宇宙デート Copyright 円谷一 2007-08-04 05:29:24
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