突発即興詩会(7月31日深夜@会議室A)
ワタナベ

ワタナベ
おk お題「クレジット」 制限時間10分 はじめ(ここからのログは投稿されます)

月見里司 [23:21:36]
クレジット

電話は誰にも取られなかった
カセットテープが
留守居を守り続けている

歪んだ果物を抱いた男が
おのれの吐き出した怒号に倒れた
横たわるその体からは
イクサが切れ目なく生い茂り
枯れ
編まれて
乾きはじめ

ささくれ立て
ささくれ立て
いずれ革靴を
貫き通すほど

ふたたび
三度ドアが鳴って
ここは
人間の住まうところ

楢山孝介 [23:24:36]
100円入れたよお兄ちゃん
ほんまに100円入れたよお兄ちゃん
100円入れたのにゲームできへんよお兄ちゃん
ゲームできへんでもいいから100円返してやお兄ちゃん

坊主だ
髪型も年齢も坊主だ
100円が重大事なところも坊主だ
嘘ついてるところも坊主だ
注意深くないところはどうだろう
とにかくそのゲームはな
100円を入れるゲームじゃないんだ
ちゃんと50円って紙貼ってるだろ
50円で出来るゲームなんだ
50円でしか出来ないゲームなんだ
うちには100円で2クレジットのゲームもあるけどな
そのゲームは50円で1クレジット
50円でぷよぷよ1プレイしか出来ないんだ
もし本当に100円を入れたのなら
中に入らずに、取り出し口に落ちてくるはずなんだ

おまえがぷよぷよをやりたくてやりたくて
たまらないというのだったなら
俺はいくらでも譲歩して
おまえにゲームを楽しませてやったのに
おまえが欲しいのは100円なんだと
一時の楽しい時間などではないんだと
店員を騙してスリルを味わいたいんだと
そうわかってしまったから
俺はおまえに冷たくすることしか出来ない

このゲームは50円専用でな
100円ちゃうからな
100円入らんからな
100返すことは出来ん

俺がそう言うと
すぐに諦めてしまった坊主は
また別のゲームに向かった
今度は100円専用台のところに
十円玉を入れようとしている
落ちてきた
戻ってきた
それは無茶だ
帰ってくれよ
坊主よ
怒りたくないんだ
実はおまえみたいな奴大好きなんだ
100円くらいあげればよかった
早く帰ってくれよ

灰人/カイト [23:25:27]
ものすごくおおきなきもちわるい蛇がいてね
上から見下ろしているの
すごくいやらしくて
生理的にダメっていうの?
もうホント、勘弁してって感じ

でね、その蛇は
ながーくてチョーグロい舌出してさ
地面に突き刺すのよ
そうすると緑の草原が
みるみる枯れていって
地肌が出て
ひび割れちゃうの

でしょ? アタシもーヤダって思って
後ろ向いて逃げ出すんだけど
そこにもいんの
もーサイアク、耐えられない

そんで座って泣き出しちゃったわけ
でもどこからか
「立ちなさい」っていう
すごく強くてやさしい声がするのね
あたし無理って思ったけど
その声聞いてるとちょっと勇気が出て
立ち上がったわけ
そしたら

足首がスパンと切れて
あたしは地面に倒れそうになった
そんで
もうちょっとで地面に付いちゃうよ蛇の舌が見えるーって所で
首がスパンといって
そこで終ったの

ううん。そうでもないんだな
おかしいんだけどそのときあたし、すごく「救われた」って気がしたんだもん

ワタナベ [23:28:50]
楢山さんの作品について
底辺に流れる考え方には個人的にとても好感がもてるし
詩にいたろうとする努力も見られたけれどもいかんせん
冗長で、濃度が低い 濃度 という見地から見ていって
みる。

ワタナベ [23:31:16]
月見里司さんの作品について
こちらはなにやら意味がわからないのだけれど
詩としての言葉の濃縮具合からすると、
俺の目には濃縮されて見えた。
ダダ・シュルレアリスムス、理性という色眼鏡を
はずしてみると面白かった。

ワタナベ [23:33:18]
かいちゃんの作品について
これはねー 最後にきらりと光った気がしたんだけ
れど、やはり月見里さんの作品にくらべると
最後の収束してゆくところが弱く感じる
ワタナベ [23:33:55]
月見里さん を選びます。

月見里司 [23:37:01]
あからさまに書きづらそうなお題 「かなたの湖」
月見里司 [23:37:16]
10分でどうぞ。
灰人/カイト [23:43:17]
長い杖を手に
歩いていた
もう一方の手では
鈴が
しゃん
しゃん

鳴っている
よそでてらりと
ひかる地があった


「水を引きたまえよ」
と声がして
私の足元に川が出来た

私は深い水に飲まれ
沈んで行き
一匹のドジョウになった


さてそれでは
目指すとしようか

水底で鈴は
錆びたりしないだろうか

楢山孝介 [23:44:47]
かつて湖に沈んだ
年老いた恋人たちは
湖底に行き当たり
突き抜け
彼方の世界で再び抱き合っている

湖に沈む前に見上げたのと同じように
空には爆撃機が飛び
冷気が濡れた肌を刺す
「死ねなかったのかな」男は言った
「いや、多分死んだんですよ」と女
その証拠に湖のそこここには
二人と同じような恋人たちが
老いも若きも
震えながら抱き合っていた
男と男もいた
女と女もいた
女と馬もいた
馬と神もいた

「湖から出られないみたいだな」
「ずっと抱き合っていなければならないみたい」
年老いた恋人たちは震えながらも
くすくす笑いあった

爆撃機から投下された爆弾が
湖の周りの森を焼くと
わずかに熱せられた湖上では
生気を取り戻した恋人たちが
生前を思い出して交じり合った

ワタナベ [23:47:53]
耳をくすぐる小川のせせらぎが
やがて二尺ほどの川となり
せきとめられ
澄んだ湖面には入道雲が映っている

あれはいつの日だったろうか
赤いワインを湖に流したのは
映りこんだ入道雲のすそに
血のような跡をひいて
薄らぎ消えていった
悠久の時間にささげた
供物

私が歴史的現在にものを言うと
さまざまに形造られた
かなたかなたの湖たちが
それぞれにこだましはじめる

月見里司 [23:57:12]
(投稿順)

カイトさんの作品の印象
神話というよりは民話テイスト。
四連五連は「オチに置きたくなる感じ」がバッティングしている気がします。
両方使うなら、離して置いたほうが好印象だと思いました。

楢山さんの作品の印象
神、かぁ。
そこだけはややクサいかな、と思いますが題意の解釈は明快だと思います。
湖から見上げた爆撃機の飛ぶ空、綺麗なのでもっと描写して欲しかったですね。

ワタナベさんの作品の印象
最終連はとても好きです。
しかし、二連の体言止めは少し雰囲気に合っていないかも知れません。
ご本人の仰るとおり、細かい言い回しを整えるだけで随分雰囲気が変わりそうです。


票は楢山さんへ。

楢山孝介 [0:03:23]
お題「老人」

ワタナベ [0:11:12]
彼の眼は深く
底には長い物語をたたえている

彼のしわに覆われた手は
年輪のように太陽の昇る方向を示している

彼の弱った足は
もはや歩くことさえままならず

しかし彼の影を苗床に
新しい命が芽吹いている

灰人/カイト [0:11:15]
広げた皮膚に
刻、刻と点刻してきた

血が滲む印もあった
しかし大半のものは薄らいで消えてしまった


その全てを
シュレッダーにかけよう

機械音は
なかなか鳴り止まない

細切れになったそれを
この痩せさばらえた体に巻いて
今最期を
踊って
引きちぎってみせよう

ああ血が
噴き出して来る
満ちる

そうわたしは
ここから産まれたのだ

月見里司 [0:11:27]
海はそこから見えますか
狭い窓は東を向いていて
当たり前のように眩しく
弱った目が、灼かれます

山はそこから見えますか
緑の壁が覆いかぶさった
ねずみの声が聞こえます
噛むものをどうか下さい

町はそこから見えますか
車椅子はすっかり壊れて
波が高すぎると嘆きます
雑踏、再びの雑踏、雑踏

経ちすぎてしまった時間

海はそこから見えますか
山はそこから見えますか
町はそこから見えますか
私はそこから見えますか

楢山孝介 [0:27:58]
ワタナベさん
第一連を読んだ印象では「ああ、ありきたりな老人像が描かれるだけかな」と思ったものの、第二連で「あれ、手はいつも同じ方向を指しているとは限らないよな、ああつまり動いてないんだ」、第三連でそれが裏付けされ、第四連から新しい生と物語の始まりを見て、「おお」「おお」「おお」と思った。

灰人/カイトさん
老人班、とでもいうのか、老人の皮膚にあるあの染み、それがありありと浮かんできた。シュレッダーにかけることも、細切れになったそれを体に巻くことも、引きちぎることも、苦もなく想像できた。映像喚起力がもの凄かった。ただ最終連の「ここから産まれたのだ」にやや唐突な感。

月見里司さん
この時間内に文字数を揃えて書く力業。早書きに任せてさらさらと展開させる僕なんかからすると脱帽。しかもこの行数、時間内で、海、陽光、山、緑、鼠、車椅子、波、とどれも細かに表現出来ている。

どれもすごくて、なかなか選べなくて困った。
ただ、敢えていうなら、ワタナベさん、月見里司さんのは、うまくまとまりすぎている。カイトさんの詩に一番爆発力を感じた。
よってカイトさん。

灰人/カイト [0:32:14]
「夏は夜、月の頃はさらなり」

いとう [0:40:12]
夏は夜、月の頃はさらなり


肌が月光にあらわれて
艶かしく光っています
あなた
あなた、と呼んでもいいのでしょうか、
あなた、
その、触れるまでもなく熱のこもる肌を
触れていてもいいのでしょうか
あなた。

山の向こうでは
私の知らぬ風が吹いて
月の影をなめていきます
あなた
たとえばあなたのその丘の果ては
私に触れられるのを待っているのでしょうか

夏の日の持つ汗の匂い
あなたのその
隠された場所の

月見里司 [0:40:43]
傘を差してあるいている
夏と秋の虫の声がまとめて降りそそぐ
ここは片田舎だった
白色の外灯はもう珍しいもので
誘われた蛾が
ジジジ、と
羽音をたてる
誰とも出会わないままで
一歩ずつ、闇の中を、
未熟な柿は
この前の大雨でだいぶ落ちてしまった
決して振り向かない
足元だけを向いてあるく

灰人/カイト [0:44:08]
いとちゃん

ああ綺麗だなーでもそれだけだなーと思ったけど最終連、さすが! 一気にむわっときたw

ワタナベ [0:47:09]
言葉の生まれる力としては梓さんのほうが上だけど 同じイメージが何度も出てくるね
灰人/カイト [0:47:13]
あずさちゃん

最初読んでなにも浮かんで来ないので焦ったw
改行できないのが悪いのかなと思って音読してみたけどイマイチピンとこない。
辛口でごめんw
ワタナベ [0:48:12]
いとうさんは さすがに10分でも遊んじゃう余裕があるなw
(1+1)/4 [0:48:31]
(よし・当方が複数行で苺蝶さんのぶんを投下だー)


静けさが夜を包み短く吹いた生暖かい風は人々の間を縫ってゆっくりと昇華、していく
闇は目を伏せたまま月を隠すその瞼の裏で煌々と輝く光を私は想像しては人混みに紛れていく

何もかもを包めそうな夜闇にそっと、触れては息を吐く吐いては、空を思う 昇華していった風は柔らかく闇の瞼を開きその輝きを外気へと晒す

ああ、やはり 闇があってこその光。

(…これでおk?)

灰人/カイト [0:49:52]
さとちゃん

柿のところが良い。
月が直接出て来ないのが物足りないけど、主人公のどこかすりきられたような心情がよくわかった。

ワタナベ [0:50:17]
梓さんのは 雑然としてる感は否めないけれど きれぎれには好きなイメージがたくさんあるよ 並べ方やねあとは

灰人/カイト [0:51:17]
というわけで老獪ながらいとくんが制しました。

ワタナベ [0:52:05]
俺は梓さんに一票やなw いとうさんのは手癖で書いた感が否めないと思う

灰人/カイト [0:52:50]
手癖っていうのもまあわるくはないよいと

灰人/カイト [0:53:34]
年喰ったらそれでしか書けんようになるかもしれん
灰人/カイト [0:53:57]
若い頃にいかにて癖をつける可かモナーとお思った

ワタナベ [0:54:20]
手癖であれだけかけちゃうんだから ってところもあるねぇ 俺は梓さんの言葉のほうが 梓さん自身に近い位置にあるように感じられたから 好みの問題やな


自由詩 突発即興詩会(7月31日深夜@会議室A) Copyright ワタナベ 2007-08-01 01:15:38
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