背びれ
おるふぇ

長く続く階段の上
不可思議な夜の海辺で
泳ぐ魚の背びれを掴み
果てしない街灯りに照らされて
泳いでいたんだ

無くしてしまった言葉の代わりに
表情とかジェスチャーとか泳ぎ方とか
色んなものを駆使して
大胆にも闇という海を泳ぐ

どこにも
新しい世界がないなら
冒険をする意味なんてない
どこかに
新しい君を見つけたくて
僕だけの海ですいすい泳ぐ

そして僕は一人になった
相棒の魚だけが側にいて
涙も海と同化して
波にさらわれていったよ

望んだ世界が
どこにもないというなら
ここまで泳いだ意味はあったか
大量に注がれる時間という波間を
何も持たずに泳いでいた

嵐がこようが
氷に覆われようが
冒険とは一人になること
泣いてなんかいられない
相棒よ 泳いでくれ
フローラ 君に逢いに行く

どこを泳いでもいいよね
どこかで君が待っているなら
泡となって海面へと昇る
太陽へと 月へと昇る
僕の魂よ
いつか君に辿り着け


自由詩 背びれ Copyright おるふぇ 2007-07-31 12:09:11
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