天雷
あおば

          070730




参議院議員選挙の投票を済まし
家の近くに戻ると
ヒキガエルのような顔した男が
路地裏に佇んでモジモジしている
物乞いのふりして飛びかかってくるのだろうか
強盗かと思うと足が竦む
それとも ただの物乞いで、気が弱いのだろうか
小さめのおにぎりを渡すと黙って頭を下げて
そそさくさと逃げるように姿を隠す
そんな人ばかり見てきたので
物乞いの人かとも思う

意を決して歩き出すと
後ろに稲光を感じる
雷鳴とともに
雨も降ってきて
薄暗くなった路地裏には
ふだん見慣れない
湿った感覚の生き物が蠢いていて少し気味悪い

蛞蝓、蝸牛ばかりでなく
ヒキガエルも偶にはやってくる
どこに池があるのかは分からないが
ビオトープを置く家は多いので
川が無くても
蛙の飲み水くらいにはなるのかと
蚊の湧くようなじめじめした生け垣の隅に
ヒキガエルのような男が黙って俯いて立っている。


自由詩 天雷 Copyright あおば 2007-07-30 06:30:30
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