安東とロワ
楢山孝介

 
安東史継ふみつぐ(二十六歳)と
高柳ロワ(十六歳)は
バレエを通じて知り合った恋人同士
「ロミオとジュリエット」のように
悲しい物語は持たないけれど
「安東とロワ」と呼ばれている

なんて
続かない話を書きながら
書きつつ続きを考えながら
脈絡もなく
昔の詩はどうして定型や韻文に
重きを置いていたかという話を思い出していた

印刷技術がなかった、
あるいはまだ発達していなかった時代には
詩は読まれるものではなくて
口承されるものだったので
暗唱しやすいもの
謡われやすいものが
流行ったのだとか、残ったのだとか

印刷技術が発達してしまった現代では
定型や韻文を使って
書かなければいけないということはない
僕は俳句は好きだけれど
日本語ラップにはついていけない
書いたものは一生懸命暗記してもらわなくても
読んでもらえばいいのだし
謡わなくてもいいのだし
(読んでもらえるかは別として)

だからといって
定型や韻文から逃げて逃げて
自由過ぎるやり方で書いていると
本当にこれでいいのかなと
寄りかかるものが無いことに不安になって
誰にも何にものしかかられていないのに
自分からぺちゃんこに潰れたくなってしまう

まあそんな話は
詩なんて書いたことがない二人
安東とロワには全く関係なくて
二人は健全な恋愛生活を送っている
(時々セックスあり)
食べ盛りのロワは体重を気にしている
安東は「気にしなくていいよ」と言いたいけれど
バレエダンサーである手前
そう簡単に言えないので困っている


自由詩 安東とロワ Copyright 楢山孝介 2007-07-28 10:18:36
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