ワールズ・エンド・アミューズメント・パーク
大覚アキラ

彼女がバスタブの縁に指を滑らせながら

オーストラリアのヌーディストビーチのことを考えているとき

海辺の遊園地の巨大な観覧車は緩やかに回転する速度を落としていた



呪術師か独裁者かという人生の重要な岐路に立ったぼくは

ロングアイランドティーの泡がすっかり消えてなくなってしまうまで

公園の小さな噴水が描く虹をじっと見つめていた



この街に最後に雪が降ったのは十四年前のことで

その年に生まれた子どもは来年の春には中学校を卒業して

幼い恋人たちは海辺の遊園地に最後のデートに出かける



結局のところ呪術師にも独裁者にもなり損ねたぼくは

海辺の遊園地で観覧車のチケットのモギリのアルバイトをしながら

彼女とオーストラリア旅行に行くための旅費を稼いでいる



閉園の時間がきて観覧車の照明が落とされて

遊園地を追い出された幼い恋人たちがさよならのキスをすると

暗い空から季節外れの雪がゆっくりと落ちてきて溶けた


自由詩 ワールズ・エンド・アミューズメント・パーク Copyright 大覚アキラ 2007-07-26 17:24:39
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