「球の描き方」
ソティロ

「球の描き方」





水の中で目を開けた
融けなかった青が
からだのなかに入り込もうとしている
皮膚のあいだから
――それは恐ろしいことだった


夕方が近づいている
おかの上にも
青がゆっくり降りてきて
それが怖い
でも青と
仲良くなりたいと思った


白い月が出ている
輪郭がいやにくっきりしていて
途中からぼやけてやがてなくなる
ゆるやかに、青に侵されている


ねえ
夜のたくあん色の月もすきだけど
もしかしたらひるまの月はもっとすきかもしれない
惑星にいる
そんな気がするんだ
ぼくが月のはなしを持ちかけると
そのひとは決まって話を逸らした
理由は今でもわからないままだ
きっとかつて月で何かあったのだろう
という想像が慰める
うさぎの目だ
赤い


手をつなぐ
それはそのころ
ぼくとそのひとにとって
特別すぎることになってしまい
そう易々と行えない仕草になっていた
触れた瞬間
戻らなければならなくなる
そして戻れなくなる
たぶん捨てることはないけれど
すこし早すぎた


あのさ、
球の描き方を知ってる?
知らない と
すぐに応えた
どんなに工夫して陰影を施しても
ほどこされても
それはまるにしかみえなかった
そのひともそうなのだろう
ぼくらのいる次元では
どうしようもないことなのだろう
不可避と不可逆とで
青く染まってジエンド


でももしもその秘密が解けたら
ぼくはその球をきっと青く塗る








自由詩 「球の描き方」 Copyright ソティロ 2007-07-25 22:03:26縦
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