シンデレラと、魔法使い。
愛心

私の足元を見てください。

貴方がくれた、ガラスの靴です。

綺麗ですか?どうですか?

あのとき貴方は、私にひとときの魔法を、かけてくれました。

そのおかげで

私は今の主人と出逢い、幸せに、とても幸せに暮らしています。

なのに

貴方の、その姿は何なのですか?

私の主人がよく話す、美しき者を好む、美しき悪魔ではないのですか?

そういえばあの夜、貴方は私を見て、美しい。と言いましたね。

貴方は私を馬車に乗せる直前、私の靴を、この、ガラスにしてくれました。

―私を忘れないで。

そう言って、貴方は私を馬車に乗せました。

ずっと不思議だったんです。

なぜ、このガラスの靴だけ、消えなかったのか。

自惚れかも知れませんが、思いました。

貴方は、私が好きだったのではないですか?



―はい。好きでした。



そう言った瞬間。その美しき悪魔は、涙を流しながらその場に崩れました。
さらさら。と、彼の身体は砂に変わっていきます。
金。銀。黒。赤。蒼。緑。
色とりどりの砂が、風に吹かれたとき、声が聞こえました。


―貴方が好きだからこそ、幸せにしたかった。



あぁ。私の目は、涙で溢れかえりました。


ありがとう。


私は貴方の砂を小瓶に入れ、今でも、お守りにしています。

貴方といつまでも、一緒にいるために。








自由詩 シンデレラと、魔法使い。 Copyright 愛心 2007-07-25 21:01:59
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