私の足元を見てください。
貴方がくれた、ガラスの靴です。
綺麗ですか?どうですか?
あのとき貴方は、私にひとときの魔法を、かけてくれました。
そのおかげで
私は今の主人と出逢い、幸せに、とても幸せに暮らしています。
なのに
貴方の、その姿は何なのですか?
私の主人がよく話す、美しき者を好む、美しき悪魔ではないのですか?
そういえばあの夜、貴方は私を見て、美しい。と言いましたね。
貴方は私を馬車に乗せる直前、私の靴を、この、ガラスにしてくれました。
―私を忘れないで。
そう言って、貴方は私を馬車に乗せました。
ずっと不思議だったんです。
なぜ、このガラスの靴だけ、消えなかったのか。
自惚れかも知れませんが、思いました。
貴方は、私が好きだったのではないですか?
―はい。好きでした。
そう言った瞬間。その美しき悪魔は、涙を流しながらその場に崩れました。
さらさら。と、彼の身体は砂に変わっていきます。
金。銀。黒。赤。蒼。緑。
色とりどりの砂が、風に吹かれたとき、声が聞こえました。
―貴方が好きだからこそ、幸せにしたかった。
あぁ。私の目は、涙で溢れかえりました。
ありがとう。
私は貴方の砂を小瓶に入れ、今でも、お守りにしています。
貴方といつまでも、一緒にいるために。