ひとつの終わり
楠木理沙

愛してる 
こんな陳腐な言葉をお互いに言い合えていた時が 
実は一番幸せだったのかも知れないね

今じゃもう 小説家や詩人や偉人やらの名言が詰め込まれた分厚い本を
蛍光ペン片手に必死になってめくってる具合なのさ
 
愛してる そんな手垢にまみれた言葉を言う気にはなれないんだ
愛してるを 愛してると言わずに表現することばかりを考えているよ

だけどさ そんな陳腐な言葉だけでよかった 二人だけの世界があったんだよ
なんだか 随分遠い話のように思えてしまうけれど

今じゃもう 愛してるって言うことが 
二人の間に広がっている溝の深さを確認する以外に 何の意味も持たないんだ





自由詩 ひとつの終わり Copyright 楠木理沙 2007-07-24 07:32:43
notebook Home 戻る