日常の破片
ムラコシゴウ




日常の破片が 通り過ぎる車を眺めている
日常の破片が 四角い空を見上げている
日常の破片が アスファルトの憂鬱を凝視している
日常の破片が 街路樹の根元で焦点を見失っている



日常の破片が 壊れそうな歌声を聞いている
日常の破片が 雲のざわめきに耳をそばだてている
日常の破片が 歩道の下の激情に耳を澄ましている
日常の破片が 踏切の電子音に耳をふさいでいる



日常の破片が 水たまりに同心円をはじく
日常の破片が ブロックの中にしみこんでゆく
日常の破片が コンビニのガラス窓に幾何学模様を叫ぶ
日常の破片が 左腕の一点で時を見失う



日常の破片が 路上に横たわり静止している
日常の破片が 階段の踊り場にへばりついている
日常の破片が 坂道の途中でガードレールに偽りを見せる
日常の破片が 生ぬるい風に身をまかせている



日常の破片は 誰かの破片
意識の中に ザジッ とした感触を残しながら



日常の破片が また靴底にはさまってやがる




自由詩 日常の破片 Copyright ムラコシゴウ 2007-07-22 08:41:56
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