校長先生
ふるる

校長先生のお話は
いつもとても長く
生徒が一人、二人と崩れてゆく

背筋を真っ直ぐ伸ばしたまま
音もなく倒れ
そのまま影となる

「これで、校長先生のお話を終わります」
その瞬間
校舎
校庭
交差点
鉄塔
町外れの丘
ぜんたいが
ふっと肩の力を抜く

その拍子にタイヤがスリップし
きれいに磨き上げられたショーウインドーに突っ込んでも
朝はやはり静か
先生の声が
よく
通るために

校庭によどんだままの影は水をかけられて
やがて染み込んで
忘れられる
忘れない
忘れない子は次に崩れよう

臭い犬が校舎に迷い込んで
こすからく半分開いたドアーに滑り込む
校長先生はかわいい生徒たちの「問いかけ」を
大切に揃えてクリップでとめ
机の上にきちんと乗せているところ

気が付いて
犬を追い出すために立ち上がり
一緒に出て行く

あれは何だったんだろう今の
自由に出たり入ったりしていた生き物
四つ足の鼻が濡れていて黒い

校長先生の
重厚な机の上に乗せられた
「問いかけ」は首をかしげ

ひっそりと腐っていく


自由詩 校長先生 Copyright ふるる 2007-07-22 00:20:16
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