「別れませう」とペリカンは言った
三州生桑
「別れませう」とペリカンは言った
「別れてほしいの」
ペリカンは左を向き、片目で私を凝視する
潤んだ黒目が、一瞬灰色に濁る
写真を撮ったのだ
下のくちばしの袋が震へる
袋の中は、たっぷりの血液で満たされてゐる
うがひのやうな音をさせてペリカンは言ふ
「嘘よ。別れたりなんかしないわ」
ごぼ、ごぼ、ごぼ
笑ってゐるのだ
「別れるもんですか」
ごぼ、ごぼ、ごぼ
「別れないわ、絶対に」
くちばしの袋に、ツッと一筋の血が垂れる
ごぼ、ごぼ、ごぼ
「やっぱり別れませう」とペリカンは言った
「別れてほしいのよ!」
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