夕道
hiro

レールの大きな軋む音で
返信を待つようなメールを
読み残したまま
携帯を折りたたんだ



扉が開くと茹だる様な
暑い風が車内の入り口付近まで
入り込んできた
私はホームに降り立ち
魂を抜取られたかのような人々に埋もれ
改札口へと向かった



少しカーブになった上り勾配を上ると
橋梁が架かった堤防道路の側面に
緑々と生えていた草花が、刈り取られ
その上を風が、夏の匂いを面白がって散らしていた



私は駅のほうを一瞬振り返り
何もなかったかのようにまた
向きを変え歩き出した



橋梁から見える街の景色が
夕日に背後から覆い焦がされ
黒く見え 私は切なくなった



大通りに差し掛かり
信号待ちをしていた。
後ろから自分の名前を
呼ぶ声が聞こえる
振り返ると彼女が
ふくれっ面で手を振ったので
私は青信号を渡らずに
彼女が追いつくのを待った



帰り道
彼女は、一緒に帰るよメール を見なかった私に
夕日より赤い顔で怒っていた


自由詩 夕道 Copyright hiro 2007-07-18 18:17:49
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