螺旋模様
カンチェルスキス





 

 朝から不調だった。
 午後もそんな調子だった。風呂場で髪の毛を切った。どこにでも売ってるハサミだった。排水口に髪の毛が詰まった。つまんだら、たいした重さじゃなかった。
 昼飯は食べなかった。
 夕方になる前に部屋を出た。ショッピングセンターに行った。何も買わなかった。トイレに入った。男が二人いた。自動ドアで女とすれ違った。笑っていた。自転車置き場の自転車が一台倒れていた。
 近くの公園を歩いた。海もある。曇り空だった。雲を割って、向こうの海に光が差していた。自転車の子供が、なあ、海きらきら光ってるで、と仲間に言った。ギアが何段階もついてる自転車だった。ほんまやあ、といちばん後ろの子供が答えると、他の子供も海のほうを向いた。ギアをいちばん軽くして勾配のある橋を渡りきる頃には、誰も海を見てなかった。
 浮浪者がオレンジのゴミ箱の前で自転車を停めた。
 その先で首輪のない黒犬がうろついていた。
 湿っぽい螺旋模様の草の匂いが鼻をついた。










自由詩 螺旋模様 Copyright カンチェルスキス 2004-05-19 19:07:55
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