賛美歌
水在らあらあ






濡れた緑で
夜空を見上げる
数秒後にこの星空が崩れてくるのを知っている
そんな目で
おまえは言う

なんて きれい

薄い唇は街の光を捉えて
俺はその前に沈黙して
街灯の オレンジ色に染まった頬を
さらさら流れる涙は
潮騒よりも純粋な愛で

濡れた瞳を
片方閉じて
緑を
片方閉じて
睫に 虹が架かって

閉じたまぶたに口づける
口づけと一緒におまえはくるりと回る
まるで儀式だ 
でも
二人には 当たり前のことのよう

私の瞼にあなたが口づけるたびに 私には星が見えるの

さらさら流れる涙は
潮騒よりも純粋な愛で
魂の一番天辺からほとばしる源流で
凍えて 透き通って

お日様がひたむきに 傾いて 
水面を 愛す
その愛し方に似てるわ
草に露置く夜神の
ひたむきな情熱に似てるの
あなたはそうやってひたむきに
星を 作るの
血と汗と 涙を 混ぜて
うつむいて 汚くて 醜く 泣いて
星を 作るの
他に何も知らないから
他に なにも 知ろうとしないから

さらさら流れる血は
潮騒よりも純粋な愛で
あんまりだ
あんまりだ

だって走りだしたのはおまえで
新月の夜に満月を呼ぶような声で吠えて
波打ち際に走って昨日買ったばっかりの水玉のドレスで
走って 飛んで 砕けちって

ねえ
あたしを
裏返しに愛して
波の裏側でも
月の裏側でも
あなたの
銀河の
裏側でも

おまえの髪がなびく方角に帆を揚げよう
それで行き着いたところでどうにかしよう
なんにもいらないぜ
光の貧しさにあえいでいた心が
息次いで見上げた波の上には青空が

あふれて
あふれて
輝いて
その輝きのうちに全ては鳴り響いて

黄道の真上に広がる美しい痣
いのち
きらめく涙
血まみれの斧
それは


全裸で

世界で


まぎれもない
俺たちの姿だ
星屑と涙と
血に まみれた










自由詩 賛美歌 Copyright 水在らあらあ 2007-07-15 10:56:46
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