創書日和「星」  万華鏡
士狼(銀)

一度しか逢えないなら
失くしてしまったって一緒だ


視線を外すと
こんなにもぼやけてしまう世界で

二人で夜を歩くとき
星屑の欠片を拾い集めては
ブリキの缶詰にしまっておいた


この☆は蠍の毒針だねって
この★は蜥蜴の眼だねって

いつ忘れたっていいように
朝色の付箋をつけて

この★は白鳥の翼だねって
この☆は狼の犬歯だねって


一人になって
指先が錆ついてしまって
取り出し口が分からないから
缶切りで底を切り取って
屑籠で光っていた硝子の破片を宛がうと
綺麗に繕われたような気がして
割れた鏡を敷き詰めて


覗きこんだら
こんなにも冴え冴えとした世界が
幾重にも重なっている


一度しか逢えないから
美しく見えるのかもしれない



自由詩 創書日和「星」  万華鏡 Copyright 士狼(銀) 2007-07-13 21:49:45
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