雨の日
アンテ


水のなかで
なぜ人は生きられないのだろう
そう言ったら笑われた
魚に生まれればよかったのにね

お茶入れたよ
あなたが呼ぶ声

雨音を聞きながら
時々コップを口に運ぶ
底に溜まった液体が
転覆した船底の空気溜まりに似ている

ここは空気が多すぎて
フリをするにも限度がある
苦しくないのだろうか
みんな 軽快に空気をかき分けながら
どこからかやって来て
どこかへと去っていく

水のなかでなら
上手に泳ぐことができるのに

あなたは困った顔で
部屋と外の雨を見比べる
なんにも判ってない
と 言葉に出せないわたしがいる

いつまで続くのだろう
こんなに頑張ったのだから
そろそろ
水のなかにもどしてほしいのに

とぷん
魚が音を立てるのは
いつだって
水と空気の境界を越えるときだけ

雨が弱まる
軒からしずくが落ちている
雨の日は
境界が曖昧になるせいだろうか
とても落ち着いていられる

お代わり いる?
コップを手に立ち上がったあなたが
一瞬 こぶしを握りしめる

いらない
立ち上がって
窓の向こう側へ手を伸ばす

とぷん
とつぶやいてみる

雨があがる



自由詩 雨の日 Copyright アンテ 2003-08-23 08:04:28
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